寝ても覚めても映像翻訳

海外在住の映像翻訳者による雑記です。

ロックダウン解除に寄せて

6月から続いていたロックダウン下の生活に、ようやく終わりが見えてきました。個人的な備忘録で恐縮ですが、ちとアレコレを書き留めておこうと思います。

 

1か月目。我が家には10歳以下の子供が3人おりますが、上の2人は自宅でのオンライン学習に切り替わり、末っ子はプリスクールを無期限で休むことになりました。日頃から子供たちが家の外にいる時間帯をめいっぱい作業時間にあてていましたが、全員がステイホームを強いられたことで日に5時間ほどあった一人の時間&まとまった作業時間がゼロに。平日の午前9時から午後3時は子供たちの勉強の手伝い&昼食の準備や片づけもろもろであっという間に過ぎていきました。夫が在宅ワークになったことで、やむを得ず作業部屋を明け渡すことになり、ダイニングテーブルやオモチャの机、キッチンカウンターなど、平らな場所を転々としながら作業しました。

 

この頃は、きっと去年のようにひたすら籠もっていれば、いずれ感染者数が落ち着くだろう。きっと去年のように1か月半も我慢すれば、元の生活に戻れるだろう。そんなふうにおバカ楽観的に毎日を過ごしていました。年甲斐もなく派手な色のネイルをしたり、派手なパンツを履いてみたり、毎日パックしたり、少しでも日々を楽しもうとしていました。

 

2か月目。ゆっくり、確実に、2桁から3桁へ、そして3桁から4桁へと増えていく新規感染者数。毎日10人前後の人がバタバタと亡くなっていきました。移動制限が敷かれたこともあり、我が家の周辺地域にはほとんど感染者が出ませんでしたが、なにせお隣には90歳、お向かいには70歳&80歳のご夫婦が住んでいらっしゃるので、万が一うちの誰かがウイルスをもらってきてバラまいたりしたらシャレになりません。外出するのが怖くなり、どこにも行かずにひたすら自宅で過ごしました。

 

週末にはデモが発生し、市民の間にピリピリした雰囲気が漂い始めたのもこの時期だったと記憶しています。感染状況が悪化の一途をたどり、「封じ込めムリじゃね?」という諦めムードが。失望、戸惑い、悲しみ、イライラ…様々な負の感情に押し潰されそうでした。静かな環境で仕事ができないことにストレスがたまり、食事の時間に一人にさせてもらう日もありました。ぼうっとしているだけで自然に涙が流れる日が増え、パソコンの前に座っても全く訳が浮かんでこない日が続きました。

 

2か月目に入った時点で仕事をセーブすればよかったのでしょうが、それでは何だか悔しい気がして、シリーズ作品のお仕事は続けていました。結果的に8月は受注量を完全に誤り、スケジュールが大変なことに(オイ)。ありったけの隙間時間を費やして無事に8月を切り抜けましたが、9月に入った途端に片頭痛で寝込むハメに。水も食べ物も喉を通らず、寝返りを打つと猛烈な吐き気に襲われ、2日間胃液だけを吐き続けました。空っぽの胃でこんなに吐いたのは初めてだったので、何か大きな病気にでもなったのかと恐怖に襲われましたが、回復に至りひと安心。もうあんな働き方はしないと固く誓いました。この時に受験中だった大手制作さんのトライアルは、7割ほど仕上げていましたが諦めることに。無念。

 

3か月目。あれれ?気がつくといつの間にか、心身の状態が以前よりも落ち着いていることに気づきました。8月の教訓をもとに9月は仕事の量をギリギリまで絞り、ようやく今の生活リズムに慣れた頃。感染者は相変わらず4桁あたりをウロウロしていますが、ワクチン接種率がぐんぐん上がり、段階的な解除に向けて物事が動き出しました。真面目に籠もっているのがバカらしくなるようなニュースを目にしても、いちいちイライラすることがなくなりました。成長したもんだ。諦めなのか悟りなのか分かりませんが、やはり人間は慣れる生き物なのでしょう。

 

そして4か月目。精神状態も安定し、こうして自身のテンパりぶりを思い起こしています。例えるなら、ずっとずっと省エネ状態で走り続けたけど、いざ充電しようとしてもコンセントがどこにも見つからない。仕方なく電池残量3%くらいで、とりあえずその場で足踏みするような感じだったと思います。分かりにくいな。もう少しどーんと構えて、パーッとネットショッピングをしたり、友人とビデオ電話でもすれば気が晴れたのかもしれませんが、そんな気も起きないほど、何もかもが億劫でした。我ながらヤワだのう。

 

私が奪われて辛かったのは「一人の時間」くらいでしたが、そんなのは個人のワガママに過ぎず、それこそ仕事を奪われた人々、愛する人を奪われた人々の苦しみを思うと言葉がありません。

 

それでも、きちんと籠もっていたことで家族の健康を守った。きっと、どこかの誰かの命も守れたはず。都合よく、そう自分に言い聞かせるしかありません。

 

…と、暗い側面にばかりフォーカスしてしまいましたが、もちろん非どんより系のネタも多々ありますので、それは次の記事でまとめることにします。長文失礼いたしました!