寝ても覚めても映像翻訳

海外在住の映像翻訳者による雑記です。

震える手で実績+2へ

前作のシリーズものが終了して3週間ほどたったある日、新たに英日字幕翻訳の案件が舞い込みました。頂戴したのは長尺の本編+予告編のお仕事。ほ、干されてなかった!やらかしてなかった!ありがたや~!パソコンの前で手を合わせ、小躍りをし、誰も見ていないところでガッツポーズをかまし、しばし喜びに浸り…ささ、作業開始っと。

 

2作品目ということで、まだまだ何もかも初めて尽くしでございます。2人体制だった前作と異なり、今回は1人で作業ということで、この作品が自分の手に委ねられているというプレッシャーをひしひしと感じております…。ブルブル。

 

思い出せばスクール時代、先生からこんなお言葉をいただいたことがありました。

 

「作品の最後に、エンドロールで出てくる名前の数を見てみてください。映像作品というのは、本当にたくさんの人が関わって作られるものなんです。それが他国で公開される時、大抵はたった1人の翻訳者のフィルターにかけられて翻訳される。それをチェックする人が、せいぜい1人か2人くらいです。翻訳に関してはたった2〜3人の手で、その作品が世に出るということです。」←この辺からクラクラしてきてその後のメモを怠ってしまったのですが、確か先生が伝えたかったのは「だから責任重大だよな?な?察しろよ?」であったと記憶しています。ふたたびブルブル。

 

スリラー系というジャンルも、これまたお初。セリフは少ないものの、1つでもドジったら示しがつきません。全てをパシッ!と決めなければ。さらに、本編中に主人公が伝説のホラー映画に言及する場面があるのですが、「これはこの映画のこちらの場面に関するリファレンスです」という申し送りを入れるべく、恐る恐るそのホラー映画を鑑賞することに。あっちこっちをすっ飛ばしながら、なんとか該当場面で証拠を掴むことに成功しましたが、いやはや、寿命が縮みそうでした。みたびブルブル。

 

もうひとつトリッキーだったのが、不案内な言語の地名や人名がチラホラ出てきたこと。血眼になってあちこち探しても、なかなか確固たる情報が入手できず。国会図書館で調べるにも飛行機は飛んでないし、飛べたとしても航空券で翻訳料はふっ飛ぶし(それどころか赤字だろうが)、書籍を購入しようとも船便で送られちゃあ納期に間に合わない。ああーー大ピンチ!ということで、何とかその言語の研究者を見つけてその方に問い合わせ、ヘンテコな表記にならないよう助言を頂戴したり…という作業もしておりました。その線にお詳しい方が作品を観て「こいつ分かってねーな」と思ったらそれこそ切腹級の恥ですものね。調べて調べてまだ調べます。

 

という感じで納期まであと数日ということで、今日は訳を寝かせて熟成させております。何度も見直しをするあまり脳内が飽和状態になり、何が良くて何が悪いのか分からなくなる始末でしたので、しばしのクールダウン期間を。真っさらな感性で、詰めの作業に入れますように!