寝ても覚めても映像翻訳

海外在住の映像翻訳者による雑記です。

B級ですが何か

作業中の華流ドラマに、ようやくゴールが見えてきました。

 

最初の頃こそきりきり舞いでしたが、「前倒し前倒し前倒し…」とお経のように唱えながら作業スピードを緩めずにきた結果、ここにきてスケジュールに少しの余裕が。うわーい!しかし、その途端に風邪をひいてダウンするという1人コントをやってのけました。あーあ…

 

おかげで、ゲイの友人にお呼ばれしていたパーティーをドタキャンする羽目に。それも、どんちゃん騒ぎのパーティーでじゃなくて、パートナーとの10周年記念をお祝いするシャレオツ・パーティーだったのに…さらに、パートナーの方が映画監督をやってらっしゃって、私に会うのを楽しみにしてらしたというじゃないですか…うっうっ。後日埋め合わせのランチをご馳走するお約束をしたので、今から楽しみにしております。(本音を言いますと、この時期にパーティーはちょとコワイですしね…とりあえず結果オーライです)

 

さて、体調を崩して作業から離れたことでやっと吹っ切れて、他の映像作品を観る心の余裕もできたのですが(←今までどんだけ切羽詰まってたんだ)、先日テレビでなんとなーく中国の古装もの映画を観ていると、みるみるある疑惑が確信に変わっていったのです…。最初からうすうす気づいてはいましたが、ワタクシの担当作品、突き抜けるような空の青さに負けないくらい気持ちのいいB級作品です。ああ、だからこそなおさら愛おしい!

 

脚本がツッコミどころ満載なのはご愛嬌。序盤と終盤で設定がちょっと変わってても許しちゃう。悲しみに打ちひしがれる登場人物がザーザー降りの雨に打たれるのも定番でグッとくる!シーン変わった途端に化粧が変わっててもOK。時代設定にそぐわない茶髪がいても大目に見るぜ!

 

テレビに映し出された(ちゃんとした)古装映画を凝視するうち、その差が目に見えて顕著に。俳優さんのツヤ髪の黒の美しさ。衣装の重厚感。スムーズなワイヤーアクション…。何か、いろいろクオリティ高いな…金かけてんな…。ブツブツ。

 

そんなある日、女優さんのうなじがアップになるシーンでスポッティングをしてたところ、見つけてしまったのです。20世紀初頭の時代設定なのに、お召し物にファスナーがついている…。気になって調べてみると、ファスナーが日本から上海に伝わったのは1930年代に入ってからなんだとか。おお、意外と昔なんですねえ。いやしかし、この時代の中国には存在してなかったのは事実です。「…ゆえに、このファスナーつき衣装は時代に忠実ではありません」なんていう申し送りはしてませんよ!「アンタならやりかねない」と思われてそうなので、念のため。

 

そして翌日、再び見つけてしまったのです。いつかのエピソードにちょい役で出てきた俳優さんが、のちのエピソードで別のちょい役で使いまわしされているのを。

 

こ、これはひょっとして、視聴者を試しているのか…?なーんにも考えずに鑑賞できるのがB級作品だと思ったら大間違いです。不意をつかれてもコップの中の液体をこぼさないようにする集中力、椅子から転げ落ちないようにする体幹の強さ、食べてるお菓子を吹き出さないようにする強靭な意志だって必要です。一筋縄ではいきません。

 

しかし!映像へのツッコミは許されても字幕へのツッコミは許されません。B級作品=B級字幕だと思われないよう、ありったけの愛と真心を込め、全身全霊を尽くして作業しています。思えば留学時代はC+を連発していたワタクシですが、ただ一度だけ、クリスティーナ・アギレラのアルバムジャケットを分析した小レポートでAをもらったことがあります。なんのこっちゃ。

 

あの頃の情熱をそのままに、ラストスパートに入ります。