寝ても覚めても映像翻訳

海外在住の映像翻訳者による雑記です。

翻訳者の義理人情

先日、オンライン辞書類語辞典をパソコンでまとめているうちに偶然「任侠大辞典 YAKUZA WIKI」なるものにたどり着いて、そこからふと義理人情について思い巡らせておりました。

 

ずっと前にベテラン字幕翻訳家さんのブログで「スクールを修了して併設エージェントのトライアルに受かったら、1年くらいはゆっくり恩返しを。新規の取り引き先を探すのはそのあとに」という言葉を読んで以来、ことあるごとに「新人翻訳者の恩返し」についてじっくり考えています。

 

この業界、お世話になった方にきちんと恩を返して筋を通す、という常識が通用するのか否か、全く見当がつきません。どうか前者であってほしい…。それとは別に、冷静になって考えてみればみるほど、翻訳者に毛が生えたような身で新規開拓うんぬんしたあげくに先方の期待に沿えなかった場合、「依頼しちゃダメな奴」の烙印を押されかねない…という懸念が大きいのです。

 

私がスクールで教えていた側だったら、頑張って育て上げた人にお仕事をお願いした時は気持ちよくOKのお返事をもらいたい。実力のある人なら、なおさら。実力が…まあ合格点スレスレ(すなわちワタクシ)の人でも、やっぱり同じかなあ。せっかくお仕事を回してあげたのにそっぽ向かれたらガッガリするし、「情の薄い人だったんだ…」と落胆するかもしれません。ナイーブ過ぎますかね?考え方が昭和過ぎて2020年じゃ通じないかしら?

 

それじゃ反対に、あちらが「あんなに世話してやったんだから」なんてこれっぽちも思ってなくて、何の見返りや恩返しも期待してなかったとしたらどうしよう。「別に仕事をガンガンあげるつもりはないし、他の会社で勝手にどんどんトライアル受けてもらって構わないんですど…」というドライなスタンスだったら、こちらの空しい片思いで終わってしまうのかしら。こんなこと、口が裂けても聞けないよう。そんなことを考え始めて、いつも堂々巡りです。

 

とはいえ、まだまだ学び足りない。もっといろいろなことを教わりたい。もっともっと実力をつけたい。そういう半人前の私の貪欲な思いをぶつけても受け止めてくれるのが、受講生の頃からお世話になっているお取引先のような気がしてなりません。謙虚な気持ちを忘れないためにも、「こいつに教えてよかった。こいつに任せてよかった」と思ってもらえるように、最初の1年は恩返しイヤーに…と初年度の「信念」をようやく確立できたような気がします。(もちろん、なりふり構わず仕事を獲得しなくてもオッケー、という経済的に恵まれた環境にいるからこそですが…)

 

ともかく、こういう思いのたけを言葉にせずとも伝える術は、コンスタントに高品質の字幕を書ける翻訳者になる。それに尽きますね!

 

いつだって真理は至ってシンプルでございます。