寝ても覚めても映像翻訳

海外在住の映像翻訳者による雑記です。

小さな幸せ

不覚にもコロナに罹ってしまいました。幸い、1日半ほど寝込んだだけで徐々に回復に向かっています。家族は揃って陰性&すでに全快してケロッとしていますが、私だけ治りが遅いのはなぜ…。心身共に弱っている時にこそ、小さな幸せを拾い集めて綴っておかなきゃ!とヘンな使命に駆られています。

 

幸せ①。今年に入ってから、懇意にしていたお取引先からのご依頼が減少傾向にありました。新年一発目のご依頼をガッツリお引き受けできなかったのがマズかったのか?なんとなくだけど去年と何かが違う…としばらく悶々とした気持ちで過ごしていましたが、じっとしていても負のループにハマるだけなので、ある日「稼働状況のご連絡」と称して様子を探ってみたところ、なんとお世話になっていた担当さんが給食…じゃないや、求職…いやこれも違う(変換で遊ぶな)、いつの間にか休職なさっていました。なーんだ、そうならそうと言ってよ~ぉ、んもう水臭いんだから~!(なんて言ってませんよ)

 

干されたわけではないと分かって一安心したものの、もはやこれで縁が切れるか…と思った矢先、なんてことない、別の担当さんから定期的にご依頼を頂戴しています。ああ、ありがたや…。思い切ってご連絡してみて本当によかった。ついでに、次の案件の素材待ちの間にぶっ倒れておいて本当によかった…。体壊すタイミングも体調管理のうちですよね(違)。

 

続いて、幸せ②。ちょっと前のことですが、複数の視聴者の方々がツイートで拙字幕を褒めてくださいました。しかも、「高」とか「最」とか「足」とか「大」とか「満」などの漢字を使って褒めてくださり、心震えました。トライアルでもこんな評価受けたことないぜ(そうよ、私はB+のオンナ)。褒められツイートがクライアントさんの目にも留まり、ご丁寧にお礼のご連絡まで頂戴したのですが、そのおかげでオバトラの株と単価が爆上がりしたとか同ジャンルのお仕事を立て続けに担当できるようになった、というオイシイ展開には至らず。そんなに甘くないっつーの。それでも、見ず知らずの視聴者の方々にナデナデしてもらったのは個人的に結構大きな事件でした。

 

当たり前すぎてアレですが、この世には万人の目に触れることのない傑作や、世間から高評価を得られなくても観る者にとことん愛されるニッチな作品があふれているのですよね。そういう作品と巡り合えた幸せ、視聴者の皆さまと共に作品への愛を分かち合えた幸せをそっと嚙み締めた出来事でありました。

 

…我ながらおセンチだなあ。体弱ってるとろくなこと書けませんね。今日からオンラインでタミル語講座を受講予定なのですが、海外住み&コロナ持ちでも堂々と参加しますよっ!あらゆる不可能を可能にする魔法、それはオンライン開催…インド映画ラブのお仲間ができますように。パンッパンッ!(拝む音です)

2022年上半期まとめ

早いもので6月も中旬ということで、上半期にご縁をいただいたお仕事を振り返ってみませう。お子たち全員がインフルエンザにやられている阿鼻叫喚の現場から、元気にお届けいたします。

 

ででん!

 

特典映像×4

英語ドキュメンタリー×7

中国語映画リライト×2

ヒンディー語映画×2

広東語ドキュメンタリー×1

広東語映画×1

その他(字幕データ起こし、リマスター版タイミング調整、歌詞対訳などなど)

 

特典映像は聞き起こし込みだったり長尺の主題歌MVの歌詞字幕だったり、さりげなく特技をアピール(私、口は悪いのですが耳はいいのです)&完全に個人的趣味として取り掛かれる案件に出会えてうれしゅうございました。聞き起こし込みだと単価がめちゃくちゃよい時もあるのですが、なにせ極小ボリュームなので大した稼ぎにはつながらず。それでも担当さんのお役に立ちたくて、対応可能な限りねじ込みました。

 

ドキュメは初めてミニシリーズ(全4話)を頂戴しましたが、納品から4カ月たっても世に出る気配がありません。もーいーかい…ちなみに過去のお仕事で納品~リリースまでの最長記録は9カ月でしたが、さて記録更新となるか。

 

リライトは非常にキツかったです。元字幕があまりにも素晴らしく、そのうえそこまでの旧作というわけでもなく、違和感のある漢字や言い回しも皆無、お直しのしようがない…。四半世紀くらい前の作品ならどんとこいなんですが。もしかして、転用料よりオバトラへのリライト料のほうが安かったのでしょうか。今回は己の実力のなさ&客観的に字幕を見る力の低さ&底の浅さに愕然としました。

 

気を取り直してインド映画2本、これがすごかった。ハイライトはこの2本で決まりです。2年前くらいの翻訳セミナーで出版翻訳者さんが「僕はこの作品を訳すために生まれてきた、という気持ちで作業する」と仰ってましたが、この2本は私にとってのソレでした。作品の引力が凄まじい。万が一またインド映画のお仕事を頂戴した時に少しでも原語で理解できるよう、ヒンディー語辞典まで購入してしまいました。(え、てかアナタ、タミル語とかテルグ語だったらどうすんの…?)

 

字幕以外のお仕事はほどよい息抜きになるので、積極的にお引き受けしました。40年前の字幕を拝見する機会があったり、オタク向け案件で国際交流に貢献したり、初めての歌詞対訳など、毎回全く異なるジャンルの案件が降ってくるので心地よい刺激になりグーです。

 

というわけで、振り返ってみるとそれなりにバラエティー豊かなラインナップなわけですが、何だか自分が何でも屋になっているような気がするようなしないような…。いまだに得意分野たるものを確立できずにいますが、今後の方向性を考えるのも悪くないかもしれません。

 

以上、2022年の上半期総括でした。

覚醒

今年1本目に頂戴した案件がヒンディー語の長尺だったのですが、その作品との出会いをきっかけにインド映画沼に頭から落っこちました。まずはこちらの本を購入してお勉強。インド映画のアレコレが非常に分かりやすくまとめられていて、めちゃくちゃオススメの1冊です。

 

新たなるインド映画の世界 | 松岡環, 高倉嘉男, 安宅直子, 岡本敦史, 浦川留, 夏目深雪 | 映画 | Kindleストア | Amazon

 

こちらの本に「今見るべき作品」や「著者のイチオシ作品」がたくさん紹介されているのですが、仕事の合間に1本ずつ鑑賞しています。今月の鑑賞記録は↓

 

『PK』

『きっと、うまくいく』

ダンガル きっと、つよくなる

『ラガーン』

『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』

『パッドマン 5億人の女性を救った男』

クイーン 旅立つわたしのハネムーン

 

まずはインド映画界の3大カーンのお一人、アーミル・カーン氏の作品を多めにピックアップしてみました。インド映画通の方が見たら「アンタ、相当ウブね、フフ」と笑われそうなラインナップですが、推しが見つかるまでは「基本のき」的な作品を観て学んでいきたいと思います。

 

ベタなチョイスですが個人的には『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』が一番面白かったです。ということで、お別れは劇中歌「दर्द-ए-डिस्को」で!シャツのボタンの意味…


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新規開拓

早いものでトライアル合格から2年が過ぎました。2年目はお取引先も増え、レートも上がり、同業者の皆さんとのつながりもぐーんと増え、収入は1年目の85万→230万にジャンプアップ。去年の今頃の記事を読み返すと「レートを上げてミリオンだ、ミリオン」とつぶやいていましたが、頑張った甲斐ありダブルミリオンと相成りました。とはいえ、2年目は仕事を詰め込みすぎて体調を崩したことも少なからずありましたので、今年はカネよりシツに重きを置いて頑張ります。

 

さて、1年目をスクール併設のエージェントさんへの恩返しに費やしたあと、2年目に入ってからはガシガシ新規開拓に励んできたわけですが、ちょっくらここで当時の動きっぷりを振り返ってみます。以下、アタックした会社さん&アタックした結果です。

 

A社:お問い合わせから1か月後にお返事あり。「書類審査に通過した場合のみ連絡します」とご返答があったのち、ご連絡なし。

B社:お問い合わせから5日後にお返事あり。2か月後に初打診。以来、定期的にご依頼あり(応募基準を満たしてなかったが、なぜか拾ってもらえた)。

C社:お問い合わせから4日後にお返事あり。希望単価よりめちゃくちゃ低いがとりあえず登録。現在までご依頼なし。

D社:お問い合わせの翌日に登録。現在までご依頼なし。

E社:お問い合わせ→3日後にトライアル→1か月後に合格の連絡。現在までご依頼なし。

F社:お問い合わせ→永遠にお返事なし。

G社:お問い合わせ→即日登録。数か月後に打診があったもののタイミングが合わず。その後ご依頼なし。

H社:お問い合わせから数日後に初打診。その後定期的にご依頼あり。が、諸々難ありのため、こちらから距離を置きつつ現在に至る。

I社:お問い合わせ翌日にお返事あり→トライアル受験。希望単価よりめちゃくちゃ低い&トライアルの出来が微妙だったらしいが、とりあえず登録。現在までご依頼なし。

J社:お問い合わせ翌日にお返事あり。トライアルの前に単価を伺い、その時点で辞退。登録に至らず。(←やっと学んだでしょ?)

 

ということで、アタックした10社中、現在までハッピーなお付き合いが続いているのは1社。どうですか、この成就率。この他に、ご縁あって業界の先輩にご紹介いただいたお取引先にお世話になっています。そして先日、およそ1年ぶりに新しい会社さんにアタックしてみました。前述のとおり、いろいろなバージョンを経験済みですので、どう転がってもビクともしませんが。お返事を待ちたいと思いまする。

キミに決めた!

タイトルからにじみ出る潔さとは正反対のネタで恐縮ですが…

 

少し前に、お取引先のA社からミニ案件のご依頼がありました。どうにかねじ込めそうなボリュームで、担当さんが「納期&単価のご相談可」と仰っていたこともあり、やや保守的な納期&やや強気な単価で交渉をお願いしてみましたが、返答待ちの間に別のお取引先B社から同じ案件のご依頼が。あれれ。

 

これってつまり、「この翻訳者ワガママじゃね?」とお考えになったクライアントさんが他の制作さんに声をかけて、それがやはり私の元に流れ着いたということですよね…B社でも同じ条件を出したらどうなってたんだろ。そんな博打は打ちませんでしたが。「あれ、またコイツ!?」ってバレてたかしら。

 

結果、A社から案件キャンセルのご連絡があり、ご依頼時そのままの条件でB社からお引き受けする運びとなりましたが、こちらが交渉を試みたばかりにA社の担当さんが失注してしまったわけで、密かに反省しております。そしてA社がキャンセルとなった時点でやはりB社と交渉の余地はあったのではないかと、さらに反省しております。うひー、難しい。

 

明日でトライアル合格から丸2年を迎えますが、3年目は欲を出すべきタイミングを見極められるようになりたいものです。清く正しく、大胆に。

お蔵入り

去年のネタですが、担当作品が配信日の4日前に突如お蔵入りになったことがありました。

 

納品後にチェックバックも頂戴し、しかと対応し、普段のようにニヤつきながら配信日を心待ちにしていたので、作品が吹っ飛んでしまいガッッックリ。最初は「マズい!なんかイケない字幕があったのかも!?」と焦りましたが、それなら再チェックバックなり何かしらのご連絡があったはず。出演者が何かやらかして逮捕されたかと思い調べてみましたが、そうでもないらしい。しばらく考えを巡らせます。以下、憶測です。

 

この作品、60年ほど前のものなのですが、あるシーンで主人公がアジア系の人物の身体的特徴をマネをしたうえで、口マネのつもりで「Ah-So!」を連発していました。「Ah-So!」というのは日本語の「あ、そうですか」が語源であり、時として中国人のモノマネとして発せられるフレーズであり、やや差別的と捉える人もいます(中国人のマネしてんのに日本語が語源という時点でアレですが)。…というふうに申し送ったうえで、字幕では省略したのですが、うーん、これが引っ掛かったのか否か。作業前に作品の英語レビューを読み漁っていたところ、「あのシーンは本当に残念だった」という視聴者の意見を目にしていたこともあり、ひょっとしたらひょっとするわけですが、今となっては真相は闇の中です。あれをのぞけば、本当にいい作品だったんですけどね…

 

いわくつきの作品といえば、いつだったか、日本人のガールフレンドをフルボッコにして逮捕された俳優さんの主演作品を担当したことがありましたが、あれがOKでこれがNGとは、なんとも世知辛い。いや、お蔵入りになった理由は本当に分からないのですが。

 

どうかどうか、字幕が理由でありませんように。ブルブル。

波形のズレ、ハコのズレ

表記揺れには人一倍気をつけているものの、あちこちブレたりズレてる案件を引き寄せることで知られるオバトラですが、つい先日も頂戴した素材がズレズレで対処法が分からずにアタフタした挙句、安定のSST音痴っぷりを発揮してしまいました。担当さんがお優しい方で本当によかった。以下、備忘録です。

 

ある日のこと、素材一式のダウンロードも無事に完了し、SDBデータ付きでルンルン、いそいそとタイムコードの同期を済ませ、よし、バッチリ。今日のアタシ、イケてるじゃん♪…と、待てよ。波形ウィンドウを凝視すると、なんとなーく、音と2フレくらいズレてないか?いや、気のせいか。昨日あんまり寝られなかったし。そして少し作業を進めてみると、うむ、やはりズレてる。間違いない。疑惑が確信に変わる。

 

恐る恐る担当さんにお問い合わせすると、快く映像ファイルを再エンコードしていただきました。ただ、「波形とのズレは何が原因で起こるかわからないことが多いので、確実に直るということも言い切れない」とのこと。ブルブル。そりゃ知らなかった。下手したらカット変わりでもれなくやらかしちゃうってこと?再度ご支給いただいた映像ファイルを試したところ無事に解決しまして事なきを得ましたが、ややや、ケッタイな(分かる方はツッコんでください♡)。

 

そしてまたある日。素材一式のダウンロードも無事に完了し、今度もSDBデータ付きでルンルン、いそいそとタイムコードの同期を済ませ、よし、バッチリ。今日のアタシも、やっぱりイケてるじゃん♪…と、待てよ。波形ウィンドウを凝視するまでもなく、思いっきり5秒くらいズレてる。迷わず担当さんに再エンコードをお願いし、再度タイムコードの同期を済ませ、うんオッケ。音と波形がバッチリ合ってる。いや待てよ、ぎょえ~!!今度はハコ全体がまるごと7秒後ろにズレている…ここでつまずいてしまいました。

 

字幕移動のオプション、4つほどあるのですが、どれを使ったらよいのか分からない。「デュレーション」が何のデュレーションを指すのかよく分からない。カンバスさんのウェブサイトや、すーさんのブログをむさぼるように拝読して状況把握はできたものの、最後の一手が分からない。小一時間ほど格闘したのち、泣く泣く担当さんにご相談すると、快く教えていただいたテがこちら。

 

①移動先のイン点のタイムを控える

②最初の字幕を選択する

③「字幕移動」→「現在選択されている字幕のインフレームを基準に字幕を移動」を選択

④「選択されている字幕以降を移動」を選択(選択、選択、うるさくてスミマセン)

⑤移動先のタイムを記載してOKをポチればTa-da!

 

…基本っすね。4月でデビュー丸2年なんですが、ダイジョブなんでしょうか私。

 

どなたかのご参考になれば幸いです。