寝ても覚めても映像翻訳

海外在住の映像翻訳者による雑記です。

リライト再び

懲りずにリライト案件をお引き受けして自分で自分の首を絞めています。今月は前半にのんびりしすぎまして、久々のドラマ案件も素材のご支給がズレにズレまくり、ふと気づいたら売上が芳しくなかったもので、ついつい尻尾をフリフリして…ゴニョゴニョ。ガチガチだった前回よりは肩の力を抜いて作業できてると思うのですが、やはり苦手意識が拭えません。つくづくリライトというのは自分には向いていない、と思いますです。

 

今回も字幕が焼き付いた旧DVDの映像ファイルは頂戴できましたが、やはり原文スクリプトのご支給はなし。キツイぜ。旧字幕だけを頼りにして作業するのと、原文を参照しながら進めるのは天と地ほどの差があるのに…。原語が英語なら多少は聞き取りでフォローできるんですが、あいにく広東語なので撃沈です。はい、ワンアウト。ここから翻訳者のプライドを賭けて、死にもの〇るいでネットにスクリプトが落ちていないか鬼検索をするわけですが、それなりに昔の作品なのでどうしても見つからず。運にも見放されてあっという間にツーアウト。何とか中国語字幕付きの映像を動画サイトで見つけたのですが、これはつまり…その…違法にアップロードされたブツですね。成果物の質を上げたい一心で悪事に手を染めるのは良心が痛みますが、仕方ありません。

 

さて、前回は旧DVDの映像を流しながら1枚ずつ書き写しつつ、その都度手を加えて「よし、これで全体の〇割直したぞ」なんて確認のためにちょこちょこ計算までしていましたが、それではあまりにも効率が悪いことを悟り、今回は最初に旧字幕をダーーーーーッと最後まで書き写してから頭に戻ってリライト→見直しながら調整する作戦に出ました。オマエ、3度目にしてようやく学んだか。しかしリライトというのはあれですね、キレイに仕立てられてまだまだ着られる昔のステキなお洋服の裾をチョキンと切ったり、ボタンを付け直したり、袖やリボンの形を変えたりしながら、全体のバランスが崩れないようにするわけですが、さじ加減が非常に難しい。何というか、継ぎ接ぎだらけの不格好なものが出来上がってしまいそうで毎度ガクブルです。同一の翻訳者が時を経て手を入れるならまだしも、他の人間にやらせると全体のバランスがガタガタになってしまうと思うんですが、考えすぎでしょうか。そのバランスをササッと整えられるのがプロというものなのでしょう。ぐぬぬ

 

今回も動画サイトの中国語字幕を1枚1枚参照しているわけですが、ところどころ一瞬で消える字幕を読み直すために前後に10秒進んだり戻ったり、地味に手間がかかります。おまけに「ああ、お上手。こりゃー逆立ちしても出てこないや」という旧字幕が何枚も続くと、いつの間にか涙目ですよ。今後リライトのご相談がきたら、潔くお断りすべきなのかもしれません。いや、でもそれじゃあいつまで経っても成長しない。リライトを制する者は字幕を制する者。そんな格言はどこにも存在しませんが、やはり今回も己の実力不足を突きつけられた一件でございました。